銀髪美少女botを作った
この記事は創作+機械学習 Advent Calendar 2021の1日目です。
はじめに
Deep Learningが画像認識コンテストで優勝して以降、機械学習をはじめとする人工知能技術の研究開発は一大ムーブメントとなり、第3次AIブームと呼ばれる状況にあります。このブログでは機械学習を二次元画像に応用した記事を何回か書いてきましたが、機械学習は画像だけではなく音声や言語など様々な分野で応用されています。このAdvent Calendarでは皆様に機械学習の創作への応用事例を紹介していただきます。どんな記事が投稿されるのか楽しみにしています。また、このAdvent Calendarを読んだ方の中に自分でも機械学習をやってみようと思ってくださる方が一人でもいらっしゃれば大変嬉しいです。
12/1時点では10名の方に参加表明をいただいています。参加者の皆様にはこの場を借りてお礼申し上げます。まだまだ枠に余裕がありますので、記事を読んで自分も参加したいと思った方は是非飛び入り参加してみてください。 adventar.org
二次元イラスト収集サイト にじさーち
この記事では現在開発中の二次元イラスト収集サイトにじさーちと、そのデータベースを利用して作った銀髪美少女botを紹介します。にじさーちの開発中のバージョンは記事にしていたのですが、現在のバージョンは記事にしていなかったのでここで紹介しようと思います。
画像の収集
にじさーちはTwitterに投稿された二次元美少女イラストを収集の対象としています。Twitterに毎日投稿される数多くの画像の中から美少女イラストだけを収集するために機械学習を利用しています。収集対象かどうかの判定は2段階で行っています。まず最初にPyTorchでファインチューニングしたモデルをONNXで利用する - kivantium活動日記で紹介したSqueezenetを使ってイラスト or イラストではない の2クラス分類を行います。イラストであると判定された画像に対してさらにIllustration2Vecによってタグ付けを行い、girl
を含むタグが付いた画像を美少女イラストと判定して収集対象にしています。全ての画像に対してIllustration2Vecを呼び出すと計算機の負荷が大きかったため、まず軽量なモデルでスクリーニングを行う運用になりました。
どのツイートに対してイラストを含むかの判定を行うかも問題になるのですが、今のところ絵師リストの監視や、フォロワーのRT・いいねなどを対象にしています。お気に入り数が多い画像ツイートをTweet検索を用いて取得する方法なども検討したのですが、イラストを含む画像のヒット率が低かったです。また、最近はシャドウバンによってイラストが検索結果に表示されないことが増えているため、イラストを描く人やイラストをよくRTする人のアカウントを直接監視することが今後より重要になっていくと考えています。なお、pixiv等で知らない絵師を発見した場合は手動で登録することもあります。
画像の表示
こうして収集したイラストはデータベースに登録され、Djangoを用いて構築されたサイトで表示されています。デザインにはBootstrapとMasonryを利用しています。なお、Twitterに投稿されたツイートの表示は、Twitterの開発者利用規約のI-Bで許可されており、 著作権法第四十七条の五で定められた軽微利用の範囲でサムネイル画像等の表示を行っています。
Twitterの利用規約がなかなか厄介で、ツイートを表示するときにはDisplay Requirementsに従う必要があるほか、削除されたツイートの内容を表示してはいけないなどの細かい規定があります。これに従うためにツイートの表示にはTwitterが提供する埋め込み機能を利用し、サムネイル画像のキャッシュなどは持たないようにしているのですが、これによりサイトの動作がかなり重くなっているように感じています。読み込み速度の改善は大きな課題です。
また、現在はIllustration2Vecによるタグ表示が中心になっていますが、Illustration2Vecでタグ付けができるキャラクター数はかなり限られています。同一キャラクターを判定する機械学習モデルを現在開発中なので、これを用いてキャラクターの自動タグ付けを可能にしたいと思っています。
銀髪美少女bot
こうしてTwitterに投稿されたイラストを日々収集していたある日、銀髪美少女好きのフォロイーが「銀髪美少女を自動で収集したい」的な発言をしているのを見かけました。Illustration2Vecに silver hair
タグが存在するので、銀髪美少女データベースが既に手元にある状態でした。こうしてにじさーちからスピンオフしたプロジェクトが銀髪美少女botです。
仕組み
にじさーちに登録された画像のうちsilver hair
またはwhite hair
タグがついていて500回以上RTされているものを5分に1度ランダムに1つ選んでリツイートしています。銀髪と白髪は非常に似ていてほとんど区別がつかないため、このような運用にしました。また、新着画像がどちらかのタグを含んでいた場合は50いいね以上でリツイートするようにしています。こうすることで過去の名作と直近の作品がバランスよく閲覧できるだろうと考えています。なお、上記のルールを満たさなかった場合でも目視判定して手動でRTすることがあります。
ちなみに、にじさーちはRSS機能を提供しているので特定のタグの新着画像をSlackチャンネルに投稿するなどの使い方もできます。タグ検索したときに出てくる「検索結果: XXXX件」の右側のRSSマークをクリックするとRSSが表示されます。(maidタグのRSSの例)
今後の課題
まず、イラストかそうでないかの判定が甘いことが第一の課題です。よくある誤判定の例としては、コスプレ画像をイラストと判定してしまうミスがあります。コスプレ画像は人間が見ればひと目でイラストでない画像だと見抜くことができるのですが、イラストと似たような色合いになっているため機械学習はうまく区別することができないようです。誤判定した画像を学習データに加えて何度も再学習しているのですが、未だに数多くの誤判定が起こっています。また、そもそも何をイラストと定義するべきかの問題もあります。ソシャゲのスクリーンショットもよく誤ってリツイートしてしまうのですが、キャラクターが描写されているイラストであることには変わりありません。ソシャゲのスクリーンショットを負例に加えて学習すると全体として精度が落ちる懸念があるため、今のところ正例にも負例にも加えずに学習させています。ソシャゲ以外にも、アニメのスクリーンショットや漫画の購入報告・無断転載画像など、イラストではあるのだが収集したくない画像はたくさんあります。コミケのサークルカットを収集するべきかどうかも微妙な問題でした。画像が投稿された文脈を理解して収集するかどうかを判断するのは機械学習には難しいので人手によるスクリーニングに頼っているのが現状です。
髪色の判定も微妙な問題です。同じ髪の色でも光の当たり方によっては別の色で塗られることがあります。銀髪や白髪は特に色が薄いので光の影響を受けやすいように感じています。髪色が微妙な場合は髪色のタグが何もつかないことが多いのですが、極端な場合は別の髪色タグがつくこともあります。
また、水色の髪と銀髪の区別も難しいと感じています(誤判定されるイラストの例)。設定上の髪色が水色の場合でも、銀髪設定のキャラとほとんど同じ色で塗られることがあるのでキャラごとに設定上の色が何なのかを調べる必要があります。これは画像だけで判定するのが不可能なのでキャラ判定を導入しないと解決できないと考えています。
以上、機械学習を用いてイラストを収集する事例について紹介しました。明日は@amane_lyricさんの「そのキャラを好きになった理由を探る」です。お楽しみに。